IIIコース・不安定核の核構造と不安定核を用いた核物性の研究


 原子核は、核子と総称される陽子中性子から構成されています。これらの構成粒子が原子核内でどのような運動をし、どのように分布しているのかは、原子核のもつ磁気モーメント電気四重極モーメントといった物理量に反映されています。ですから、これらの核モーメントを測定することによって、原子核の性質を知ることができるというわけです。βNMR法を用いると、短寿命β放射性核の磁気モーメント、電気四重極モーメントを測定することができます。これらの測定により、原子核構造をより詳しく研究するというのは、我々の研究室の重要な課題の一つです。最近ではIIIコースを使って、20Fの磁気モーメントや、19Oの磁気モーメント、電気四重極モーメントが測定されました。
さてβNMR法は、核を強磁場中に置かれた結晶に埋め込んで行います。IIIコースには強力な電磁石(8000Gauss)が設置されており、βNMR法に不可欠な核偏極を保持するための十分な外磁場を供給することができます。埋め込まれた原子核は結晶中において、周囲の原子核や電子と超微細相互作用を行います。この相互作用によって、原子核の結晶中におけるエネルギー準位ェ決定されます。βNMR法ではこれを直接検出しています。この相互作用は、原子核の持つ磁気モーメント、電気四重極モーメントと、その核が感じる結晶中の微細場によって決まるものなので、核モーメントが分かっていれば結晶中の微細場を測定することが出来るというわけです。また、核反応で生成される不安定核の個数は非常に少ないので、埋め込まれた結晶中では非常に希薄な存在となるため、その結晶中での相互作用には結晶の内部構造が直接反映されることになります。このように、不安定核を用いることによって、結晶の内部構造に関する情報を得ることができるので、我々のコースでは、様々な興味ある物質(金属や半導体、イオン結晶等)を対象とし、その研究に力を入れています。例えば、現代のコンピューター社会を支える半導体の材料であるシリコンや、青色発光半導体ZnSe、イオン結晶ではTiO2等について研究しています。


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