IIコース・弱い相互作用と中間子交換効果についての研究
II コースでは、バンデグラフ加速器によって不安定核を生成し、そこから放出されたβ線のスペクトルを精密に測定し、そのスペクトルから原子核に関する様々な情報を得るという研究を行っています。最近では、弱い相互作用におけるベクトル型核子流の保存の検証、そして原子核内部におけるπ中間子交換効果の研究を行いました。
前者は弱い相互作用と電磁相互作用が同じ形の相互作用で表せるという理論の検証実験です。自然界には4つの基本的な相互作用(重力相互作用、電磁相互作用、強い相互作用、弱い相互作用)が存在することが知られており、全ての物理的な現象はこの4つの相互作用の現れです。この4つの相互作用を統一的に記述することは、現代物理学において最も重要な課題のひとつであるのですが、このうち弱い相互作用と電磁
相互作用は理論によって統一的に扱うことができるようになりました。それを実験によって検証しようというわけです。
また後者は、弱い相互作用に従うβ崩壊を用い、強い相互作用である核子間力を調べる研究です。複数の核子で構成される原子核は、核子どうしが中間子の交換によって生じる核子間力によって互いに結合してなり立っています。中間子の交換は、原子核の持つ電磁気的性質や弱い相互作用に関する性質に大きく影響すると考えられています。II
コースで行った16Nのβ崩壊の遷移確率の測定は、中間子交換効果を調べる上でひとつの有効な方法です。これは、核子を構成していると考えられているクォーク間に働く力(QCD=量子色力学)にも関係がある研究でもありますので、物理学的に非常に重要な意味を持っています。
これらの実験を精度良く行うにはβ線のスペクトルの精度の良い測定が必要で、そのためにII
コースではいろいろな工夫をしています。その一つは、実験装置付近に密な物質(原子番号の大きな元素でできたもの)を置かないようにするということです。電子(陽電子)は原子核に比べて非常に軽い粒子なので、散乱されやすく、それゆえエネルギースペクトルに歪みが生じてしまうためです。またβ崩壊の遷移確率の測定ではこれを精密な測定をするために、核反応標的としてガス循環型反応箱を使用しました。これは、核反応によって生成された目的以外の長寿命の原子核をビーム照射後すぐに反応部分から取り除き、新しい標的ガスと取り替えることができる装置です。
これによって測定上不必要な信号(バックグラウンド)を取り除くことができるのです。
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